イタリア製2サイクルの過激なエンジン。マスプロダクションに実現不可能な造形。よくも悪くもファンティックならではの完成品でした。これがなけりゃあ誰も「ファンティック」なんて知りえなかっただろう事を断言します。
僕がチョッパーを初めて知ったのは1970年の映画雑誌「スクリーン」新作紹介ページ。「イージーライダー」の反っくり返ったライディングフォームと長いフロントフォークのカットはなんとまあ衝撃的でした。主題歌のステッペンウルフ「ワイルドで行こう」はすでに一度流行っていて、映画公開時とあわせて二度ヒットチャートに上った。僕は彼らのシングル盤「マジックカーペットライド」を持っていた。これ、ブームだったサイケデリックそのもの。ボーカルのジョンケイはちょうどドアーズのジムモリソンと時代と雰囲気がぴったりダブる。
もっと憧れたのは映画「バニシングポイント」に出てくるチョッパー。ハーレーの過激な改造車でフロントフォークが長い。
映画ではCL350に乗る裸の女の子の広告写真と盲目のディスクジョッキー「スーパーソウル」が「ワキ」役として印象的なのだが、主役を助けるバイクマニアの格好いいヒッピーがよかった。
兄ちゃんの名前はたしか「エンジェル」。小さなポケバイをダッジチャレンジャーの屋根に載せ、そのヘッドライトとサイレンで警察車両を装い、夕暮れの検問を突破するシーンには感動させられたものです。